東京生まれ、東京育ちです。
でも、東京というものをじっくり歩いたことはない。
実は自分の足下のことを知らない。
昨日、大学院で知り合った友だちと、東京を感じる旅に出た。
代官山 - DAIKAN-YAMA-
集合前に、知り合いになった村上さんの漆の個展をめざし、ひとり代官山へ。
高校生の頃、学生服を着たまま代官山に遊びにきたっけな。メンノンなんかの雑誌を読みあさり、それと同じブランドの服を着ることで、背伸びして、少し大人になった気がしていた。
その頃の代官山は、静かにたたずむ住宅地の中に、処狭しと小さい古着屋やジーンズショップが立ち並んでいて、それはそれでいい雰囲気を醸し出していた。いまは、すっかりビルやブティックが整然と並んでいて、昔の面影は一見どこにも無い。
フライヤーを忘れてしまったけれど、昔の記憶を辿り、個展が開かれている和食器屋さんへ。たどり着くまで、ぐるぐると代官山をぶらり。ちょっと変わってしまった代官山だけれど、路地を一つは入れば、昔のようにちょっとアンダーグラウンドなお店がまだまだたくさんあることに気づく。
お目当ての和食器屋さん「
暮らす」はアパートの一室をおしゃれなお店に改装し、江戸切り子、信楽焼、そして漆食器などが小さい店内にところせましと並んでいる。
棚におかれているものひとつひとつが手作りであり、暖かみを感じるものばかり。
村上さんの漆食器は、一番奥に陳列されていた。漆独特の光沢と木が持つ温かさと、どっしりした黒の配色。写真に収めようとしたところ、村上さんに「漆を撮るのは難しいんですよ」と言われる。撮ってみると確かに難しい。艶、重量感、そんなものは一眼デジカメ初心者に撮れるものではなかった。
村上さんの作品は、伝統的なかたちのなかにどこか、おしゃれな「あそび」が入っていた。その中で升が気に入ってしまった。黒で染められた升の中に、キリンの模様が一点だけ入っている。そのアクセントがなんともまぁ、おしゃれ。この後、持って歩いて傷つけたりするのが嫌だったので、今度購入することを約束する。お店で箸置き2個を購入して、帰ろうとすると、これまた見入っていたものの一つの箸をプレゼントしてくれる。おしゃれ。ちょっと奮発した料理を作ったときに使わせてもらいます。今日は、朝からいい気分。
渋谷・原宿 - SHIBUYA+HARAJUKU-
昔だったら歩いて渋谷まで行ったが、今日は後が長いので東横線で一駅の渋谷へ。
待ち合わせの東急ハンズを目指す。迷う。渋谷は苦手だ。人が多く、その上、入り組んでいる。そこにいる若者の雰囲気もなんか刺々しくて、息苦しい。ここの東急ハンズも迷路のように入り組んでいる。大学院の友だちと合流し、今日、どこ行くか考える。とりあえず、お腹がすいたということで、天気もいいし、ピクニック気分で代々木公園のイベントを見ながら、いっぱい引っ掛けるかということに。歳の差が8歳もある大学生なのに、考えがおっさんなところが一緒にいて、疲れない。
代々木公園では、KODOMO・MUSIC・ARTフェスティバルというものをやっていた。こじんまりとしたイベントで出店も多くない。つまみとビールで地べたに座り乾杯し、音楽が演奏されるのを待つ。周りはヒッピー色の濃い人たちが、ワインボトルを持参し、すでにいい具合になっている。「彼らは、何をして生きているんだ」という学生の問いに、「僕らも周りから同じように見られているだ」という答えが一番しっくりいったようだった。
音楽は、ジャンベとシンセ、トランペットにドラムスをジャズベースに乗せていた。おでんとビールと音楽。ちょっとしたフェスに来た気分。時刻は2時を回っていた。すでに日はオレンジ色になって夕暮れを思わせる。次の目的地を模索する。一人が浜松町から出ている浅草行きの舟に乗りたいという。いいね。そうしよう。
浜松町 - HAMAMATSU-CHO -
山手線で浜松町まで20分。浜松町をおりて日の出桟橋を目指す。大学1年のときだったか、高校の男友達とここからフェリーに乗って、新島に行ったっけ。企画したやつは、当初、神津島の宿を取ったつも
りでいたけれど、フェリー乗り場で確認したら、宿の在処は新島だった。危うく新島を通り越して、宿が取れていない神津島にいってしまうところだった、なんて思い出もあったな。
出発までの20分、友だちはしっかり職員のおじちゃんにフェリーのどこのポジションがいいかを聞いていた。おじちゃんも慣れたもんで、「下町を見るなら右側、近代的な夜景を見るなら左側。後ろのデッキは寒いけれど、景色が一番いいね。そこで、ビールがあればなお良い。」と、まるで僕らの気持ちを読んでいるような回答をしてくれる。待ち時間にソフトクリームで腹ごしらえ。友だちが食べていたチーズステーキバーガーはスパイスが利いていて美味。
またまたビールとおつまみを買い込み、良い席を確保するために出発前から列に並び、舟が到着したとたんに乗り込む。お目当ての後部デッキに行くとすでに先客が占領していた。どうやら、日の出桟橋は通過点であり出発地点がほかのところにあるか、もしくは片道だけで
はなく、往復で乗っている客がいるようだった。日本人がほとんどだが、そのデッキには、白人の旅行客もおり、かれらの図体とテンションが大部分の座席を占めているように感じられてしまう。気を取り直し、1階部分のテーブル席のある客席に落ち着く。舟が動き出す。おじちゃんが言っていた下町風情というよりも、墨田川沿いに多くの高層マンションが建ち並び、それを目で追っていく。勝鬨橋などの途中途中の橋々は、形も色も異なり、それがツアーのアクセントとして楽しませてくれる。後部デッキに何度か足を運んでみると、なるほど、窓からでは味わえないワイドな景色が、舟の排気と一緒に楽しめる。夕暮れと夜景が一緒に味わえる良い時間帯に乗ることができた。あっという間の20分ほどの船旅を終えると、有名なうんこビル、アサヒビール本社が目の前にあったので記念撮影。
浅草 - ASAKUSA -
舟乗り場から、歩いて2分もすると、浅草寺の雷門の前に。夕方になっても、人通りは多くにぎわいがある仲見世を歩く。昼間と違い、ネオンに輝いた商店も、また一味違っていい雰囲気。浅草寺に到着し、自分は喪中のため、お参りは出来ないというと、「おみくじ」は大丈夫といわれ、なぜか納得し
くじを引く。
「凶」
やっぱりひくべきではなかった。凶であるからには、しっかりと結びつけてこなければならない。気合いを入れて結ぼうとしたら、おみくじが破れてしまうという始末。このおみくじは今月だけ有効なのでは、と甘い期待を持ちつつも、来年はおごり高ぶらずに、こつこつ努力しようと心に決めた師走。
浅草から上野までの2駅分を歩く。目指すところは、線路のガード下にある赤提灯。新宿の思い出横丁、吉祥寺のハーモニカ横丁の次に行ってみたかった、上野の赤提灯街。アメ横の反対側に位置するその通りは、思った通りの雰囲気を醸し出していて、2駅歩いた疲れも吹っ飛び、テンションも上昇。「大統領」という大きな名前をもつ、友人お勧めのお店は、テーブルといすを通りに広げて、老若男女でにぎわっている。これまたお勧めという店員の女性やおばちゃんは優しさのあるぶっきらぼう。大好きだ、この場末な雰囲気と人情。こんな所を知っていて、しかもそのお勧めポイントがこれだ、という俺の友だちは本当に23歳か疑いたくなる。
路上では少し冷えてきたので、もう一人の友が行きたがっている焼き鳥屋へ。代々木公園以来、ゆっくり落ち着いて話す。大学院に来ているだけあって、話しはまちづくりや政策というアカデミックな話題が中心になる。そういったことを、教科書の言葉ではなく、熱く語れる20代の彼らはかっこいいなぁ。プライベートな話題も盛り上がり、気がつくと終電が近い。彼らは宿はノープランで、マン喫にでも泊まろうと思っていたという。少し遠いが、俺の実家に来て泊まってもらうことに。上野から山手線と西武線を乗り継いで、ひばりが丘へ。実家に到着し、最後の一杯がはじまった。
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